スピーカーをつくりました。
ほぼほぼ完成したので、その内容について書いてみたいと思います。
動機・理由
スピーカーを作ろうと思った理由は2つあります。
- 塗装が楽しくなってた
- モニタースピーカーを新調したい
ここ最近軽く木工で遊ぶようになりまして。手軽にやりたいので木を切ったりする加工はしないのですが、
既存の木を選んでボンドで接着したりしてちょっとしたテーブルなんかをつくってます。
その過程で、塗装が奥深くて面白くて。同時になかなか思う通りにいかない悔しさなんかもあり。
ただ、塗装のためにあれこれ作るようなモノも思い浮かばないし、場所とるし、かと言って意味もなく木の板を塗装するのもつまらない。
ドライブが楽しくてそれが目的だったとしても、なんかしらの目的地が欲しくなるようなのと同じですね。
ついでに言えば毎回あれこれ試したくて買った塗料とかが大量に余ってるのも大きな理由です。
しかしこれは丁度スピーカーの自作にマッチするブームだったからで、ここから木工のなにかをやるにしても、
スピーカーにしようという明確な理由がありません。
それは次の理由です。
モニタースピーカーが欲しい。
これはもうかれこれ5年くらい思っててなかなか買うきっかけが無いまま時が過ぎています。
ちなみに今はYAMAHA NS-10Mを使っています。STUDIOではないからテンモニと呼んでいいものか分かりませんが、
まあ所謂テンモニらしきもの、です。
かれこれ15年ほど使ってます。
このスピーカーはとても素晴らしいのですが、時に今のジャンルが難しいことがあります。
低音がスカスカなので、ヘビーな音を調整したいときによく分かりません。
いい加減慣れてますが、ただちょっと別の体験をしてみたいと思うのも人情。
たまには心機一転したい。
しかし決定する意志が弱く、ずるずると引き伸ばしてた訳です。
どのスピーカーが最適か、そして今選ぶとしたらパワードがほとんど。
となると電源周りとかケーブルとか這い回しし直しか…いやそれくらいすぐだけど…
としょうもない部分が意外と摩擦抵抗になって、悩みに悩んだ結果、おそらく最悪のチョイス
自作しよう
に行き着いた訳でした。多分巷の評価のあるモニター選びに比べて全く質も価格もかなわないチョイスです。
しかし、これほど愛着が持てるスピーカーもないんじゃないでしょうか。
ダメだったらリスニング用に使おう、という想いのもと、制作することにしました。
設計と材料
まず設計ですが、これは奇をてらわず、10Mに近い寸法にしようと決めました。
正直今の自分の部屋からするとややでかいです。が、小さくするにはより精密な設計と知識がないと失敗しやすそうだと思い。
10Mからリニューアルしたい訳ですが、ただし基本的な方向性は変えたくありません。
低音ズンズン系はモニター用途としても、また普段のリスニング用途としてもあまり聞き慣れておらず、
理想は10Mの拡張、現代版、というイメージにしました。
で、寸法は
390x240x190
としました。一回りでかいのですが、これは材料の話に繋がりますが、板厚を20mmにしたためです。内寸は
350x200x150
です。
材料はハードメイプル無垢材。ここは色々悩みました。
材質もですが、集成材かどうかも。
悩み悩んで、無垢材というプレミアム感はこれから長く使うぞという期待から決定しました。
ハードメイプルは硬めがいいだろうなあというのとウォルナットとかは高すぎるのと、
諸々のバランス感に加え、楽器的にはメイプルという選択は安心感があるというか思い入れがあるというか。
そんな理由で決定。
スピーカーユニットは、どうしても自作スピーカー界隈を調べてもリスニング面でのチョイスしか出てこないので、
正直選択の参考にするものが乏しく。
そうなると慣れ親しんだメーカーが一番だと思い、思い切ってアルパインを選択。
そう、カースピーカーです。
インピーダンスが低い事以外に特別変わったものもなく、そして今はリビング用として毎日使ってるスピーカーも
アルパインのスピーカーを市販エンクロージャーにつっこんだもので、だいたい音の特性は理解しており。
そんなこんなでアルパインのX-170Cにしました。
セパレートであるX-170SでなくコアキシャルのCにしたのは、
・特に車載しないのでセパレートする必要がない
・ツイーターの寸法とかうっかりミスしたらめんどい
・安い
といったところが理由です。穴増やすと木材が高くなりますし。でもいつかセパレートの埋め込み2WAYもつくってみたいけど。
発注
諸々パーツ含め発注しました。
最も緊張したのはやはり木材ですね。寸法ミスがないかとか、何か致命的なうっかりをしてないか、とかあれこれすごく不安まじりでした。
なんせ4万近くかかったので。
結果問題なくてOK。
制作
SIGMA fp (45mm, f/5, 1/100 sec, ISO1250)SIGMA fp (45mm, f/5, 1/100 sec, ISO1250)
SIGMA fp (45mm, f/5, 1/100 sec, ISO1600)
こんな感じの木材が届きました。
正直そのまま無塗装で使いたいくらいの心地よさでした。。
軽くニスがけして保護してやれば…と思ったりもしたのですが、そういう素の良さを活かすのは次回からかな、と思いとどめました。
失敗してもやらないと上達しないので。
上達しないまま次に繋げたらそこだけ下手くそのまま…だから次もやらない…
そういう先を考えて、とにかく塗る決心をしました。
SIGMA fp (45mm, f/3.2, 1/100 sec, ISO2000)
木工ボンドで接着。丸一日だったか二日だったかこのまま放置。
しかし接着1つとっても素人にはなかなか大変な作業でした。
ここでコンマ数ミリずれたらそれが最後まで影響する訳で。
しかしボンドを塗ると割と滑るし、どうしても若干の誤差はあるからクランプで固定しながらも手心加えないといけないし。
気になったのは底・天板部の木材がややたわんでいて、角を合わせると中央が少し膨らんだ点。
まあ無垢材であるかぎり限界はあるのかな、ならそれはそれで味だ、と解釈。
SIGMA fp (45mm, f/4, 1/100 sec, ISO800)
前面のバッフルは後でボルトで固定するタイプで行くことにしました。
素人なのでミスる可能性が高いことも鑑みて後々中にかんたんにアクセスできるようにしたかったのと、
塗装の色に悩みに悩んだ末前面だけ変えようと思ったからです。
前面は明るくしようとおもったのでとの粉も使ってなめらかにしてみました。
ちなみに箱部分は黒。
巷のスピーカーだと逆パターンが多いのだけれど、逆張りです。
ほら、モニタースピーカーってあっさり黒が多くて、合わせてもつまらないかなーって。
SIGMA fp (45mm, f/4, 1/100 sec, ISO500)
ひねくれはもう少し続きます。
前面の塗装は柿渋にしました。
古くからある古典的な塗装ですが、製品はもちろん自作でもそんなに多くないんじゃないかなーと。
あと明るめにしたかったので、手持ちにある塗装の中で一番融通が利くのもあって選びました。
半透明白でもよかったなと思ってますが。
SIGMA fp (45mm, f/4, 1/100 sec, ISO1250)
柿渋は塗り重ね具合や日光に当てた具合で色味が変わってくるので、
そこそこ重厚感を出しつつもべったりならない具合を狙いました。
ちょっと手心加えてサンバースト風にしてみよう、と塗り重ね具合を調整したりやすがけの量を変えたりした結果、
とても微妙になりました。まあしゃーない。
結局サンバースト計画のせいで変なムラもできてしまいましたが、
しかし木目感も残りなかなか渋い感じになったのではないでしょうか。
SIGMA fp (45mm, f/4, 1/100 sec, ISO400)
箱側(前面と対比してそう呼ぶことにします)はウッドジェルの黒。
結果こういうちょっとビンテージ感のある塗りムラが発生しました。
ここは自分自身納得してるのかしてないのかわからないのですが、嫌いではないのでよしです。
そもそも木目感は残したい&黒にしたい&最終的にツヤありにしたい、と思えばこうなるのでは、と思ったり。
がっつり黒塗ったらもうピアノ塗装の失敗みたいな感じになったり無垢材の良さも消えるし、とか。
いかんせん知識が不足していて、良い・悪いケースが思い浮かんでません。
SIGMA fp (45mm, f/5.6, 1/60 sec, ISO6400)ここでちょっと、前面と箱側のくっつく面に1mmのゴムシートをかまそうと思い、20mm幅で切り出しています。
接着しないのでたわむと浮きますし、前述の若干の誤差で、0.2mmくらい木材ごとの高さが違ったので。
SIGMA fp (45mm, f/6.3, 1/100 sec, ISO800)色塗りが終わった時点で重ねて置いてみて完成図を想像してモチベーションをアップさせる
SIGMA fp (45mm, f/5, 1/60 sec, ISO6400)
SIGMA fp (45mm, f/4, 1/60 sec, ISO6400)
SIGMA fp (45mm, f/8, 1/50 sec, ISO6400)
その後はひたすら毎日ニスがけ&やすりがけ。丸一週間、毎日2塗りくらいしてました。
箱側は1面しかできないので前面より少ないのですが、それでも5度塗りはしてるはず。
SIGMA fp (45mm, f/4.5, 1/100 sec, ISO5000)
やっと塗り終えて、必要な穴を開けて
SIGMA fp (45mm, f/5, 1/100 sec, ISO3200)SIGMA fp (45mm, f/7.1, 1/80 sec, ISO6400)
コンパウンドがけをしたら最後にみつろうクリームを塗って塗装は完成です。
作業の8割が塗装ですね…
あ、コンパウンド前くらいに穴あけをしていました。
前面&箱側、前面&ユニットともに鬼目ナットとボルトで固定します。
まあ前面&箱側の位置合わせは想像通り大変でした。
まず2つを定位置で合わせクランプで固定。その状態で2mmのドリルで貫通穴を開け、
それをベースに前面部は5mm、箱側部は6mmに穴を拡張。
極力丁寧に作業してなんとか合わせることができましたが、それでもちょっと強引にねじこまないときつい部分があります。
SIGMA fp (45mm, f/4.5, 1/100 sec, ISO3200)
切り出しておいたゴムをセメダインで接着。
このあと内側周辺にもちょっとスポンジを張り巡らせて念押ししました(写真がない)
SIGMA fp (45mm, f/3.2, 1/100 sec, ISO500)順序が逆になりました。このあとコンパウンドをかけたんだった。
上の写真はコンパウンドをかけるまえ、ボルトの位置チェック中の様子。
外す前に写真をとってラストスパートに臨む様子です。
今見ても「ちょっと惜しい手作り感」が出ています。絶妙に次もっとよくしてやるぞと思わせる出来です。
できた
SIGMA fp (45mm, f/4.5, 1/40 sec, ISO6400)SIGMA fp (45mm, f/3.2, 1/100 sec, ISO6400)
そんで背面にスピーカーターミナルを取り付け、ネットワークも装着し、配線し、バスレフの筒を差し、あれこれして完成です。
ちょっと勢いでやっちゃって途中写真がありません…あ、吸音材も入れました。
背面の様子は今からでも写真撮れますね。撮ったら追加します。
音はまだエージング中なので正確なことは言えませんが、かなりタイトでハイが強いです。
見ての通り、バスレフの穴はかなり小さくしました。
計算では57Hzあたりを強調してるはずですが、口径は周波数もですがきっと音量にも関係するはず。
もともと10Mの拡張想定なので、密閉に近い感じを出したかったので、想定通りではあります。
しかし今慣れ親しんでるDDLがハイが非常におとなしかったので、ここまでハイが強いのは想定外で。
今の所ネットワークで-6dBに設定しつつ、エージングの様子見をしているといったところです。
元々を考えると、コアキシャル型のカースピーカーなので、ツイーターはかなり強めなんじゃないかなあと想定。
もしかしてのもしかして、セパレートを選ぶべき理由がそこに隠れてたかもしれません。
まあネットワークで調整できるし、これから馴染めばまた変わるかも、と期待してます。
そもそもそこまで耳に痛いレベルというわけでもなく、許容範囲ですし、出ないよりはやりやすいです。
比較的おとなしめで正確性を感じるのでアルパインをチョイスし、
暴れること無く箱鳴りも抑えきっちりとした音にするため硬く厚い木材にし、
軽く補強程度で想定してるバスレフポート。
まあ総合してこうなるわな、という感触です。
今はとにかくリビングで鳴らしてます。
落ち着いてきたら部屋に移動し、10Mとの特性の違いを測定してみたいなーと思ってます。
このスピーカーで音楽制作ができる日がとても楽しみです。
過去つくった3台
SIGMA fp (45mm, f/4.5, 1/50 sec, ISO6400)無理やりリビングに設置中。
下のがランエボから取り外して使ってる初代。こちらは2000円くらいのエンクロージャーを使用。
長年テレビに使っており、ハイが弱めながらリスニング的にかなり好みの音。
右が去年作ったバックロードホーン型。こちらはcarrozzeriaの10cmのスピーカー。
父親のジムニーで使用していたもの(車を借りてた時純正があまりにあんまりで勝手に付け替えた)。
こちらは個性の強めな音ながら、疲れない味わい。ジャズとか聴いてる。
エンクロージャーは組み立てキットを使用。
順を追って自作成分を増やしていってます。
流石に木材切り出しはできないなあ…老後広い一軒家と余裕ある空間とお金でも無いと。。
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