IK Multimediaのモデリングエレキベースシンセ、「MODO BASS」について書きます。

 

フィジカル・モデリング音源

フィジカル・モデリングと聞いてワクワクするのは私だけではないはずです。

ヤマハのVLやVPにはとても憧れたものです。これは管楽器や擦弦楽器でした。トランペットにバリトンサックスのリードを…なんて自由に組んでシミュレーションできるのがモデリング音源の魅力です。ソフト音源としてはMODARTTのピアノ音源Pianoteqが印象に残っています。

 

その場で計算で生み出される音色はPCM音源には無い”本物感”を感じます。

…という考えは実に理系といいますか、偏った考えではありますね。本物を録音した方が本物の音じゃんって考えならPCMの方が本物です。

 

この辺は、シンセが決して本物ではないから起こる議題でありポイントなのですが、前述の現実にはありえない組み合わせだって作れる所はむしろ本物でない特権だと思います。

 

ベース音源

しかしよくエレキベースのモデリングをしたな、と思います。

ベースの打ち込みは様々な音色の中でも比較的容易な類だと思います。

勿論様々な奏法や細かいニュアンス、アーティキュレーションは突き詰めると底なし沼なのですが、こと音色に限って言えばPCM音源でも相当ハイレベルになっており、昨今の音源ではそのアーティキュレーションの幅の広さや、ベタ打ちやそれに準じるレベルの素早い打ち込みを自動的にリアルに調整してくれるような、そういう”優しさ”がキモなのではと思います。

ではベースはフィジカル・モデリング音源にする必要がないか、意義がないか、と言われると、

ある

と言えます。個人的にそれはエレキベースの楽器としての特性というより、商業性・在り方・人との繋がり、そういった面での性格から感じるものです。

 

ベースのモデリングが楽しい理由

エレキベースという楽器はとても個性的で、人々はそれに魅了されています。

これから書くことはエレキギターも同様なのですが、まず道具としての存在感。さまざまなメーカーのさまざまなこだわりや歴史、それからくる所有欲、各々の経済状況で奮発すれば割と数本手に入る身近さ、そんな”存在にくすぐられる”道具の1つです。

人々は本やネットで色んなメーカーのベースを眺めたり調べたり、工場見学の記事を読んだり、使ってるパーツを調べたり、木材の材質の違いを理解したり、そこからこれだと思ったものを購入したりします。このタイプの魅力があるプロダクトは他に楽器ではエレキギター、アナログシンセサイザー、またエフェクターやアウトボード。その他ではカメラやレンズ、ゴルフクラブ、腕時計、そんなものがあります。

 

トランペットでも勿論ブランド毎の特徴などで様々な魅力があるかと思いますが、誰もが何本も揃えたくなるほどではないのでは、と思います。先程のボディとリードの例えでも、流石にBACHのボディにヤマハのマウスピースを組み合わせたトランペットで…というところまではないのではと思います。

 

エレキベースはですね…アイキャッチ画像のベースの通り、スティングレイのボディにリッケンバッカーのPUを載せたら…という妄想だけで幸せになれるのです。妄想が計算によって実際の音として出てくれるのはもう最高なのです。

 

エレキギターも是非欲しいところですのでIKさんに超期待します。

ギターの場合はちょっと違って、フェンダーにギブソンのPUを…というよりディマジオに…EMGに…なんてことをしたくなりますね。ピックガードあり・なしとか、ボディ、ネック、指板の材質変更とか…

もうこれコンポーネントギターシミュレータじゃないですか。

 

物理モデリングはこうやってワクワクしてしまうのです。

 

ドラムは?

ここまできたらドラムもモデリングを…と思ったりもしますが、打楽器のモデリングなんて想像するだけで大変そうです。面振動ですし。

またギター・ベースのようにメーカーやブランド別の魅力でうふふするにはモデリングが厳しいものがありそう。多分PCMの方が確実です。

そう、ドラムは各種楽器の集合体。正しくは”ドラムス”なので、現状のPCMシンセで、セット内の各楽器をいろいろ入れ替えるだけで楽しいのです。LudwigのセットにPAiSTeのシンバルを…とか。

 

MODO BASSテスト音色

とりあえず楽器そのものの構成は弄らずに標準で一通り鳴らしてみました。

アンプ設定だけ弄ってます。

・ピック弾き

 

・指弾き

 

動画中アタック位置を変えたりしています。

フロントにいくほどボワボワとした太い感じ、リアにいくほどゴリゴリな硬い感じになるのは当然、PU位置などの関係もあり楽器毎にも変化が違いますね。

スラップは割愛です。ピック弾き風に打ち込んだシーケンスの使い回しなので流石にスラップは1から作り直しになるので…指弾きもそういう理由で100%指弾きらしいフレーズではないですがご了承ください。

 

各楽器それらしい音が出てますね。実機検証とかまで出来ませんし、細部まで聞き分ける程の能力は持ってませんが、モデリングで現物に近づけるって簡単なようで難しいと思います。「理屈はあってる。けどかけ離れたものができる」という現象は多々起こるもので、そこには考えもしなかった部分での変化などが実は大きかったりすると思います。

例えば弦振動に対する空気抵抗とか、空気の質によるフィルタ効果とか、想像上での例えですが。

 

後はもう作った人にしか知りえない情報。想定通りに近い音が出たのか、想定外の為何か神の手を加えたか(モデリング基盤でなく、あくまで結果優先の味付けをどこかに組み込んだとか)、それは分かりません。

モデリングらしく色々変えて遊んでみよう

折角なのでデフォルトにないフリーダムなベースを作っちゃいます。

エンジニア的調整(EQ、コンプ等)も楽しいですが、こういう演奏者が楽しめる音弄りは素晴らしく良いです。

もしかしたら遠回しに、AもBも変更しても結局ちょっと特性の違うEQでしかない、とかそういう面もあるかもしれません。データの一意性には乏しいかと思います。

つまり、

Aを弄るとある特性のEQ、ある特性のエンベロープが変化する

Bを弄るとある特性のコンプ、ある特性のエンベロープが変化する

などAとBで被るパラメータがあると操作性は本来著しく損なわれるので正しいUIとは言えないのですが、そもそも音楽がもっとファジーな存在な為、逆に理に適った操作系になってるとも言えます。

 

見方を変えると、

エンベロープを弄ると、AとBの成分が変化する

とも言えるし、音楽的なパラメータとしてはA,Bが根源なのかもしれません。

 

言ってることが複雑になってきたのでこの辺でやめます。

 

1つ言えることは、

「この音色がいいんだけど、でももうちょっと”ゴリッ”とした感じにならないかなー」という音作りにとても直感的

ということだと思います。

EQやコンプであれこれ試すより、ピッキングの位置を少しリアに寄せる、などの方がスマートに音作りができます。

 

おわりに

CPUのパワーも上がってきて、これから物理モデリング音源がもっと増えていったら幸せになれるなーと思っています。

ひとまずギターが欲しいです。

あとピアノ兼エレピ兼ハープシコード的な打弦楽器モデリング。

ドラムはPCMで良いと言ったけど、シンバルだけに特化したモデリングなんかもたまらないかもしれません、径、厚み、合金の成分、ハンマー、etc…

妄想が止まりませんね。

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